男子と会話はできません
市ノ瀬くんは急に腕を離すと、恥ずかしそうに「ごめん」と言った。
わたしも、たぶん顔が赤くなっているのバレてるんだろうな。
「い……え」
「座ろうか」と、椅子に座って向き合った。
やっぱり言わないとダメ、かな。
だってこんなに心配してくれてるのに、嘘を吐くのは失礼だ。
訊かれても答えたくなかったけど、校舎裏での出来事を簡単に説明した。
「ええと……ごめんね。
えっとね市ノ瀬くんと仲良くしないでって言われて、返事できないでいたら、水かけられて、警告って言われたの。
それだけだから、怪我してないし、それから何もされてないし」
言いながらもう大丈夫と胸を張ったつもりだったのに、市ノ瀬くんの顔がだんだんと曇っていくのがわかって、少し怖かった。