男子と会話はできません
「……いや、なんでもねーや」と口ごもった。
「そう」
大事なことを伝えたそうだったけど深く聞かなかった。
予鈴が鳴り「うあ。チャイム鳴った」と市ノ瀬が気づいて階段を足早に下り始めた。
どうあっても間に合わないな、と、その後ろをゆっくり下る。
「そういや隼人、最近、部活行ってなくね?」と、急に立ち止まって振り返った。
「ん?ああ。調子悪くて休んでるんだ」
「調子悪いって、どこかやったのか?」
「うん。右膝が痛くて。診てもらったら炎症起こしてるって。まあランナー膝ってやつだね」
「はっ?まじかよ。急にか?」
「ううん。前から違和感はあったんだ。最近、走ってるときでも痛むようになってさ。とりあえず安静にしろって医者に言われて様子見てるところ」
「まじか」と、俺を見た。