男子と会話はできません




「羽麗―!」


「実咲ちゃん」


移動教室の帰り、実咲ちゃんに会った。


「ちょっと噂になってたよ」と、わたしを廊下の端まで誘導すると開口一番にそう言った。噂という言葉に胸がどくんとした。


「市ノ瀬くんと付き合ったんだね」


そっちか、と少しほっとしたような怖いような気持ちにかられた。


「ごめんね。実咲ちゃんに言うつもりだったんだけど、会えなかったから」


「いいよいいよ。ていうか二股の話は大丈夫だったの?それ心配してたからさ、びっくりして」


「うん。それなんだけど、本人に訊いたら彼女は今いないし、わざとそういう嘘をついて振ってたって言ってたから」


「ええっ。本当に?紛らわしいね」と、呆れた。


「ふふ」


「でも誤解なら、良かったよ。がんばってね」と拳をつくった。
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