男子と会話はできません
「そんなこと訊きたかったの?」
「そんなことじゃないよ。心配になった、から」
「そっか。俺はてっきり市ノ瀬のことで何かあったのかと思ったよ」
「………」
やっぱり知っていたんだ、と、身を固くしてしまう。
「好きだったんだ?」
そう訊かれて、「好き」ってはっきり言わなきゃいけないのに、咄嗟に出てこなかった。
隼人くんには好きな人としか付き合えないなんて言ったのに。
だから、こくりと頷いた。
「そっか。なら良かったよ。おめでと」と言われ胸が痛んだ。
わたし、さっきから酷いな。勝手だな。そう思った。実咲ちゃんにも、隼人くんにも。だから見せないようにしないといけないんだ。
「ありがと」
「残念だって思ったよ」
「えっ?」
「市ノ瀬が怒るだろうから、高塚と約束した犬の散歩も、家に遊びに来てくれることも出来ないから」
嫌みとかじゃない優しい話し方だった。
そっか。市ノ瀬くんと付き合うってことは、隼人くんと二人で会ったり出来ないってことになるんだ。