男子と会話はできません

今までだって、そうだったのに、最近少し距離が近くなっていたから、隼人くんから、そういうことをしてはいけないというラインを引かれると寂しくなった。


でも違う。先にそのラインを引いたのは、わたしだ。


だって本当はそのくらいが丁度いいんだ。隼人くんの優しさに甘えていたら変わらない。隼人くんを見ても何も思わないようになりたいんだから。


「約束、破ってごめんね」


「怒ってないから謝らないで」


「うん」


それから、躊躇いがちに言った。


「あのさ高塚、急にこんなこと訊くのもどうかと思うんだけど……中三の頃、橋本から変なこと言われなかった?俺と話さなくなる前とか」


「変なこと?彩子から?」


「俺のことで」


「ないと思う」


「そっか。なんでもない。忘れて」


そう言われるけど、何か心に引っかかるものを感じた。


中三のあの頃。


隼人くんの顔が見れなかったあの頃。だけど隼人くんの声で思い出から呼び戻される。


「市ノ瀬、きっと大事にしてくれるよ」


「うん。そうだといいな……」


「……俺さ、高塚には幸せになってほしいけど、市ノ瀬のことは相談にのれないと思うから」


「……えっ?」


「怪我、心配してくれてありがと」


教室に予鈴が響き渡った。

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