男子と会話はできません




「なにこれ?可愛い」


杏奈の鞄の中から飛び出した、赤いお守り。表にはシューズとRUNの文字のフェルト。手作りみたい。


「ああこれ。総体のお守りだよ。マネがくれた」


上手に作れるものなんだなぁと手に取ってみる。実咲ちゃんも作ったのかな。


「そういえばバスケ部も来月、県予選じゃなかったっけ?インターハイ」


「……えっ?そうなの?」


「知らないの?」


「うん。言われなかった」


「あっそう。応援でも行ってみたら?どうせ暇でしょ?」


「お……応援?それは、まあ暇だけど」


そういえば市ノ瀬くん、来月も大会があるから、わたしのハンカチをお守りにしたいって言って持ってくれていたっけ。それが県予選なのかと、今更気が付いた。


それなのに、ハンカチがお守り代わりって、寂しいよね。


ちゃんとしたお守り渡そうかな。日にちがあまりないから簡単なのしか作れなそうだけど。


「なに?わたしもお守り作ろうかなとか考えたの?」と、杏奈が意地悪そうに笑った。










放課後、昇降口を出ると市ノ瀬くんは言った。


「なんかさ、せっかく放課後遊べるのに、いつも通りスーパーでお喋りして帰るって、勿体ないよね」


「……でもここの辺、行くとこない、もんね」


「駅前のほうまで行かないと遊ぶところもないって、放課後をなめてるよね。この学校」と、残念な顔。

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