男子と会話はできません
今日は水曜日。
基本部活が休み。そういっても幽霊部員のわたしにはあまり関係ないのだけど。
昇降口を出ると、細長い花壇のふちに腰掛ける人がいた。
市ノ瀬くんだ。
目があったから軽く会釈をすると、なぜか手招きした。
わたし?と、自分を指さし確認すると向こうから近寄ってきて、後ろ手にしていた手を前に差し出して見せた。
その手には、サイダー。
「……」
受け取ったほうがいいよね。だってもうさすがに断れないし。
「あ……ありが」と言いかけると、わたしの反応がいまいちだったせいか、
「もしかして炭酸、ダメ?」と指摘された。
頷いた。
「またもや失敗かー。イケメンがCMしてたから好きかと思ったのにー」
と、しゃがみ込む。すごく残念そう。
「あ……貰います。大丈夫です」
ガバッと顔をあげると、「今、時間ある?」と、わたしに訊いた。