男子と会話はできません
「でも怒るのってさ、本人達にとっては守りたいものとか傷つきたくない何かがあったりするからじゃないかな。
そういうの教えあわないなんて、勿体ないことだと俺は思うよ」
「……」
「だから喧嘩するの」と立ち上がった。
ベンチに座ったままのわたしと向き合うと、「パスの練習でもする?」と言った。
「俺さ、バスケでボールを繋ぐとき相手が受け取ってくれるって信じて投げてるよ。
でも最初からそうじゃなかった。やっぱりさ一緒に練習してさ試合して、そういう信頼関係って出来ていくんだと思うんだよね。
言い合ったことだってあったしね。
だから、ぶつかるの、ちゃんと。
投げたボールがちゃんと返ってくるって、そうやって知ればいいんだよ」
ボールをわたしにポンッと投げた。
「わっ」とびっくりしたけど、しっかりと受け止めていた。
「なんか言いたいことあったら、遠慮なく投げてよ」
「投げる?」
「言葉。ちゃんと返すからさ」
今、いちばん、市ノ瀬くんに言いたいこと。思い浮かべて、彼の胸元にめがけて投げた。