男子と会話はできません
「あ……あと、市ノ瀬くんに謝らないといけないことがあって……」
「謝るって?どうしたの?」
「実は土曜日、秋田のおばあちゃんたちと温泉行くことになって、試合観に行けなくなって……ママにね、行かないって言ったんだけど、ダメで。本当にごめんなさい。行きたいって言ったのわたしなのに」と、頭を下げた。
がっかりするかな、と思ったけど、「いいよ。仕方ないじゃん」と、あっさり言うものだから拍子抜けした。
さっきまで大袈裟すぎる反応だったから、余計だった。
一瞬、杏奈の釣った魚にはエサを与えないなんて言葉が頭の中を走り抜けた。
来てほしいとか前みたいに思わなくなってるのかな。
「じゃあ、これ持って頑張るから」
「う……ん。あの、行けないから申し訳なくて作ったわけじゃないからね」
「……えっ?そんなの思い付きもしなかった。そういうこと?言われると怪しい」
と、疑いの眼差しを向けられる。墓穴を掘った。
「ち……違うよ。本当にね、あのね、言われる前から、その、おばあちゃんが、えと……お守りで……」
「ごめん、冗談」
「もう……」
意地悪だなぁ。またワケわからないこと喋っちゃって、恥ずかしい。
「俺、嬉しかったよ。お守りもだけど。当たり前のように、俺の大事なものを大事にしてくれるのが。やっぱり羽麗ちゃんのこと好きだと思った。本当、ありがとう」と、言うから、好きでいてくれてるんだって安心した気持ちになった。