男子と会話はできません
放課後、市ノ瀬くんのお家に向かった。
「お邪魔します」と言うけど、「誰もいないから気を遣わないでいいよ」と、市ノ瀬くんは言った。
「えっ?」
逆に緊張する一言で、またもやフリーズした。
「共働きだし。兄貴、県外の大学行ったから家にいないし」
「そ……そうなんだ」
部屋の中どころか、家の中に正真正銘の二人きり?杏奈が変なこと言うから、緊張するに決まっている。
「じゃあ始めましょうか」と、カチコチに固まりながらノートを広げた。勉強するだけなんだから、大丈夫。勉強、勉強。
「羽麗ちゃん、得意教科なに?」
「んー。英語かなぁ」
「英語か。じゃあ教えてもらおうっと」
「市ノ瀬くんは?」
「体育」
「……」
「……まあマシなのは、数学かな。歴史も嫌いではない」
「歴史かあ。面白さがわからないな」