男子と会話はできません
帰り、市ノ瀬くんと隼人くんとわたしでバス停に向かった。
「隼人、足の調子どうだ?」と、市ノ瀬くんが気遣った声をかけた。
「この前教えてくれた整体通い始めてから調子いいよ。一応部活もたまに行ってるし」
「そうか。良かったな」
「けっこう有名なところだったんだね。マネージャーの子も知ってたから。あ、真壁ね」と、わたしを見た。
「実咲ちゃん?」
「なんか自分も昔、怪我したからか、けっこう心配していろいろ教えてくれるんだよね。あの子」
「実咲ちゃん、面倒見いいし、自分も経験したから気持ちがわかるんだろうね」と言うと、市ノ瀬くんが、「もしかして好かれてんじゃないの?」と、隼人くんに言った。
わたしは、ドキリとした。その通りだったから。そんな話を聞いただけで察するなんて勘が良いと思った。
だけど、勝手に気持ちをバラすことなんてできないから、知らない顔をして黙った。
「好かれてる?」
「だから、隼人といちゃつきたいわー、あたくしってことだよ」
「へえ」
「へえじゃねーよ。相変わらず、淡白だな、お前は。本当に好かれてたらどうすんの?」