男子と会話はできません
少し考えたのか、間を持って、「そのとき、考えてみるよ」と言った。
市ノ瀬くんは少し驚いた顔をして、「そんなこと言うと思わなかった」と、呟いた。
バスが来て、隼人くんと一緒に乗った。後ろの席に肩を並べて座る。
すぐに市ノ瀬くんから、[気を付けて帰ってね]とメッセージが届いた。
[送ってくれて、ありがとう。市ノ瀬くんも気を付けてね。あとテスト勉強するんだよ]と返した。
「うまくやってるんだね」と隼人くんが言った。
「あ。うん。そうだね」
「家にいたから、びっくりしたけど、邪魔してごめんね。みんな、行くってきかなかったしさ。俺も高塚いると思わなかったし」
「わたしもびっくりした」
「よく行くの?」
「今日が初めてだよ」
「そっか」と、窓の外に視線を向けた。外はもう暗くなってる。
わたしはそんな隼人くんの横顔を見ながらさっきの話を思い返す。
実咲ちゃんは、隼人くんと全然ダメだって言ってたけど、実際はそうでもなかったのかもしれない。
もしかしたら、実咲ちゃんが思うよりも、隼人くんは実咲ちゃんのこと良く思っている。
膝の上に置いていた拳をギュっと強く握った。