男子と会話はできません

黙っていると肯定と受け取ったのか、「やっぱり」と、呟いた。


「羽麗ちゃんさ、俺が一年のとき、音楽の教科書渡しにいったの覚えてる?」


「……」


「俺、覚えてる?」


首を横に振った。


確かに音楽室に教科書を忘れてしまったときがあって、親切な男子がわざわざクラスに届けてくれたことはあった。


だけど、相手の顔は覚えてなかった。


「教科書渡したら奪い取るように戻って行ったから、嫌われてるのかと思ったんだけど心当たりもないし、なんだこの子って思ったの覚えてる」


「ごめんなさい」


お礼は伝えたつもりだったけど、聞こえてなければ、失礼だったに違いない。


多くの男子にそう思われてる気がした。


避けて関わらないようにしてた、男子とは。


だから会話しないから、気がつかないだけで。
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