男子と会話はできません
バスケットゴールのリングにぶつかって、ボールは落ちた。
「あっ」
「市ノ瀬、10周な」と、顧問の冷たい声が飛んだ。
くっそ。フリースローの練習、三本ミスった奴は走るという暗黙のルール。
ああ、悔しい。まああんまりフリースロー得意じゃないから、けっこう多いんだけど、走るの。
一度、ひとりになってしまったせいか、走りながら、ふとさっきのことを思い出す。
まあ、そんなの普通だよな。同じクラスだし、一緒にああいう作業してたら、話すのだって当たり前だし。当たり前だとわかってるのに、もやもやする。
好きって思われてる自信がないからか。
『好き?』とこの前、言ってくれたときは、嬉しかったけど。
実際は、言わせたみたいなもんだったし。
ていうか、俺もそんなに言ってない。自信なくて。好きって言って、好きって返ってくるなら、言えるんだろうな。好きなのに、なんか言うの恐い。
そう言って、顔が曇ったらとか、考えたら、恐い。