男子と会話はできません
人のことなのに、自分のことみたいに言う。なんでそんなに悲し気なんだよ。
「高塚先輩と一緒にいるときは嬉しそうですけど、先輩がひとりのときは、悩んでるように見えますよ。今日だって、おかしかったじゃないですか。わたし……」
「……若槻、先行って。部室に忘れ物した」
嘘を吐いた。これ以上一緒にいたら、何を言われるかわかんないから。そして俺も何を言うかわかんない。
「……ごめんなさい」と、さよならの代わりに謝った。
しおらしくて、若槻らしくない。最近、そういう姿ばかり見てる気がした。おれがそうさせてんのか?
俺、だめだな。あいつに対して冷たすぎかと反省した。しかもそれがちゃんと相手に伝わっているのがいけない。
下手に優しくしなくていいと思うけど、これじゃ本当に意味のない八つ当たりだ。
ため息を吐いた。人に思われるのって、こんなに難しいことだったんだなぁって、実感した。今まで、考えたことないや。誰かに思われたい。彼女に好きになってもらいたい。
そういう気持ちってもっと優しくて、強くなれるようなものだと思っていたけど、逆じゃねーか。