男子と会話はできません
またバスケとわたし、どっちが大切なの?みたいに、俺の気持ちが伝わってないなんてことしたくなかった。
比べられるようなことじゃないんだよっていうのが伝わってほしかったから。
そして、はっとする。
「うあ。チャリ置いたとこ、通り過ぎてた」と、そこで気が付いた。
「市ノ瀬くんって、意外に周りのこと見ないで歩くね」と、優しく笑った。
やっぱり、その笑顔を俺だけに向けてほしいなんて、独占欲むき出しで、本当にどうしようもない。
「羽麗ちゃんといると、周りが見えなくなる」
「え?」
「それくらい、好きってことだよ」
「……」
「ちょー好き」
照れくさくなって笑って誤魔化した。
「わっ……わたしも……」
ごにょごにょと語尾は聞き取れなかったけど、きっとたぶん同じ言葉を言ってくれたに違いない。
信じよう。彼女の気持ちを信じよう。今は百パーセントじゃなくても、いいから。俺のこと好きなんだって、信じよう。きっと変えていけるはずなんだ。