男子と会話はできません
抱きつかれた細い腕や鼻腔をくすぐる彼女の香りに、呼吸を忘れそうなくらい、意識が引き込まれてしまった。
「ご……ごめんなさい。痛くなかった?」と、身体を離そうとするから、思わずそのまま彼女を胸に寄せるように片腕で抱きしめた。
「……隼人くん?」
呼ばれて、我に返る。
「高塚は、大丈夫?痛いところない?」
「な……ないけど」
どうして抱きしめてるの?と言いたそうな戸惑いの声。わかっているのに、腕をほどけなくて、こんなところで何をしてるんだろうって、思っているのに、ほどきたくなくて、そのまま動けなかった。
「良かった」
「隼人くんは?」
「俺も大丈夫だよ」
「う……うん。あの……」
「豪快に転んだね」と、腕をほどいた。
「ご……ごめんね。本当に」と、慌てて立ち上がった。
「あ……足痛いかも」
「えっ?ええええっ?大丈夫?」
「手、貸して」と、お願いすると手を差し出す。触れると、もう一度、引き寄せて、抱きしめたいと思った。