男子と会話はできません

石川が一年の体育祭のときにくれた絆創膏には、石川が嫌いといった高塚の好きなキャラクターの絵が描いていて、この前貸してくれた英語のノートは高塚のだった。


もしかして、と思った。


それを渡したかったのは、石川じゃなくて、高塚だったのかなって。


勘違いかもしれないと思ったけど、そんな顔をするから間違っていないようにとってしまう。


「あの……なんて言えばいいのかな。あの……そうなんだけど」


「やっぱり高塚だったんだ」


「……うん。ごめんね。あれは……その」


どうして、避けていたのに、そんなことしたんだろう。


どうして、気にかけてくれたんだろう。


どうして……。


自分の都合のいいように考えてしまうんだ。


高塚も、別れてから、ずっと……。


同じ気持ちだったのかなって。


「もっと早く気がつけば良かったよ。すごい後悔した」


一度抑え込んだ気持ちを口にすると、堰を切ったように溢れだしてくる。


言わないと決めていたのに。
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