男子と会話はできません
「ちょっと髪直してくる」
「髪って、別に乱れてないけど?」
おろしっぱなしの髪は、杏奈の言うとおりそのままでいいのかもしれないけど、とりあえずここにいるのが耐えられなかった。
そのまま横に一歩踏み出すと、わたしの左肩が誰かの腕にぶつかる。
「ご……ごめんなさ……」
見上げると、江野隼人(コウノハヤト)くんが立っていた。
一瞬、目を見開き驚いた顔で見下ろす。
あ……。
身長、伸びてる。
「悪い」
その一言と、ばっちりあってしまった視線に、顔が熱くなってしまったのがわかって、足早にその場を去った。
女子トイレの個室、施錠を閉めドアを背にすると、ようやく息をついた。