男子と会話はできません

「もう終わるの?」と、隼人くんは彼女の顔も見ずに市ノ瀬くんに訊いた。


「うん、そろそろ交代。なに?二人でいたの?」


「ううん。今ここで会っただけ」


隼人くんが答える。


「へえ。偶然?」


「市ノ瀬のとこ、たこ焼きなんだ?」


「ん?おう。あとは占いと人生相談。あ、人生相談なら、たこ焼きより早く出来るけどやってやる?」


「市ノ瀬に相談するくらいなら、自分で考えるよ」


「つめてー奴だな」と、肩を抱いた。


「じゃあ俺、行くところあるから」と言うと、視線を若槻さんに向けた。さっきから黙っていたけど、「じゃあ先輩、気が向いたら、うちのクラスにも顔をだして下さいね」と、落ち着いた口調で言った。


「あいよ。隼人、気が向いたらこいよ。占いでもしちゃるからなー。あ、俺じゃないけど」


「はいはい」


二人がいなくなるのを見届けると、


「変わってもらうから、待ってて」


と、教室に向かった。







ひとり、残されて思い出す。市ノ瀬くんを見る女の子って、あんな顔をするんだって。


わたしは、市ノ瀬くんに釣りあってるのかな。


わたしが、地味とかそういうのも気になるけど、いちばん大切な気持ちとか心とか、釣りあってるのかな。


わたしは、どんな顔をしてるんだろ。
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