男子と会話はできません
「すっげー面白かった」
購買部前のベンチで、ジュースを持って座った。
迷路は時間内に出れて、思ったより楽しめたみたい。
そのあと、実咲ちゃんの猫カフェに行ってみたけど、いなくて、ぷらぷらと校舎を歩いて休憩と、ここに来た。
「時間、あわなかったかな。残念」
「あとどこ行こっか?」
「なんか食べる?」と訊くと、市ノ瀬くんは立ち上がり窓から中庭を見た。
「中庭にも出店あったっけ」
「うん。おっ、あんなとこにいたよ。羽麗ちゃんの友達」と、市ノ瀬くんが言った。立ち上がり追った視線の先には、実咲ちゃんと隼人くんがいた。
「一緒に回ってんのかな」
市ノ瀬くんは、わたしが思っていたことをすんなりと口にした。
「そうなのかもしれないね。この前、実咲ちゃんに誘われたようなこと言ってたから」
「へえ。そうなんだ」と、またベンチにどかっと腰をおろしたから、真似して座った。
チラリとわたしを見ると、「あの子、やっぱり隼人のこと好きでしょ」と、言った。
正解だけど、人の気持ちをバラすことはやっぱりできなくて、わかんないなと、目をそらした。