男子と会話はできません
3(side.I)

一目惚れは信じない。


それはいつからだろう。


「市ノ瀬くんのこと、一目見て好きになりました」


校舎の裏に呼び出されると、緊迫した顔で女の子が言った。


初めて見るなー、同じ学年とか言うけど、何組とか全然わかんないし。


そんな余計なことを考えてたら、返事をするのを忘れてしまっていて、女の子は催促するような顔で俺を見つめていた。

不安と期待が入り混じった表情。


中学んときだったら付き合ってたかもな。なんも考えず、ただ嬉しくて。


そりゃ急に始まった謎のモテ期にちょっと調子にのっていた時期だったりして、若気の至り。


最近じゃ、返事は大体決まっていて、


「ごめん。俺、彼女いるから」


断り文句、最強説。


彼女がいなくても、平気で言うからタチが悪い。


だけど大体の女の子は諦めてくれる。便利な言葉だ。だからつい使ってしまう。


でもきちんと断っているのだから、思いやりだと受け取ってほしいけど。
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