男子と会話はできません

「高塚?」


ハッとした表情で俺を見た。周りなんて見えていなかったみたいだ。


「どうしたの?廊下のまん中で立ち止まって」


「あ、ううん。ちょっとボーッとして」


「市ノ瀬?」


「あ、うん」


「声、かければいいのに」


「なんか取り込み中かなって思って」と彼女のくせに遠慮がちに言う。俺だったら、嫌だなと思った。彼女に無駄な気を遣わせるのは。


「一緒に行く?」と返事を待たずに行った。市ノ瀬は「あれ?隼人、羽麗ちゃん」と、順々に顔を見た。


「高塚が、焼きもち妬いてたよ」


「えっ」と固まる高塚の横顔が照れくさそうで、ああやっぱり、好きなのかと、自虐的なことをしている自分に笑いたくなった。








行くところがあると、2人に告げて、真壁に言われた時間に中庭に行った。屋台がいくつかあって、かき氷と書かれたのぼりの前に真壁がいた。


「良かった。来てくれて」


「ああ言われたら、行くしかなかったから」


少し哀しげに眉を寄せて、「そうだよね」と、言った。

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