男子と会話はできません










家に帰るのが、憂鬱だった。


新しいものを買わないといけないけど、ママになんて言えば怪しまれないか心配だったから。


「ただいま」と、そっと中に入った。出てきたのは幸子さんで、足元に飛びついた。ママが続いて玄関へ向かってきた。


優しくなでたあと、時間が経つと言えなくなりそうだったから、「ママ、あのね。実は体操着、半袖、なくしちゃって」と、告げた。


「なくした?えっ?どうやってなくすの?」


「ロッカーに入れてたと思ってたらなくなってて」


「ええっ?それって、盗まれたってこと?」


「誰か間違って持っていたんじゃないのかな」


「本当に?ロッカーって鍵ないの?」と渋々といった顔だけど、納得したのか、それ以上なにも言わなかった。
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