男子と会話はできません
「えっ?」
「高塚も大事なことは人任せだったもんね」と区切り、「江野のこととか」と続けた。
「隼人くんのこと?」
「ごめん。なんでもない」と、言って、嫌がらせの話に戻した。だけど、さっきの一言が気になって、わたしは彩子のアドバイスや心配が頭に入ってこなかった。
日が沈みかけ、彩子は見送ると、家の前まで出て来てくれた。
「んじゃ、近いけど気をつけんだよ」
「うん」
「またね」と手を振る。わたしは心がざわざわして仕方ない。このまま帰ってしまったら、彩子に確かめる機会を失ってしまう。すごく怖かった。迷いながら、やっぱり気になって訊いた。
「あのさ」
「ん?」
「彩子、わたし、何かしたかな?」
「はぁ?どした急に?」と、笑う。
「なんか、今日いつもと違うから。というか……その……隼人くんの話になると怖かったから」
急に表情が引き締まった。それから、はっと短く笑った。
「気のせいじゃない?」
「本当?」
ほっとしたけど、彩子は「あーっ」と俯きながら溜息を吐く。顔を上げた。