男子と会話はできません
「ごめん。なんか今日はイライラした」
「イライラ?」
「高塚にイライラした」と、真顔で言った。
言葉を失った。彩子に面と向かってそんなこと言われると思いもしなかったから。
「さっきのさ、嫌がらせの話聞いて、それ、あたしかもって思っちゃったよ」
「あたしかも?」
「あたしが同じ学校で同じ立場だったら、そんなこと高塚にしたかもしれない」
「何言ってるの?彩子はそんなこと出来ないよ」
「高塚は本当にバカだね」
呆れたように言う。出来るよ、と、彩子は呟いた。
「え……それどういう意味?」
腕組みをする。彩子は蔑むような目でわたしを見てた。
「あのさ、あたし、高塚に言ってないことあったんだけど、知りたい?」
わたしは自分から、何?と訊く勇気がなく沈黙した。ひどく嫌な予感が胸を塞ぐ。それを了承と感じたのか、彩子は続けて言った。
「あたし、中学のとき、江野のこと好きだったんだ」
「えっ?」
それは本当に信じられない言葉だった。隼人くんのことが好きだった?中学生の彩子は隼人くんの文句を言うくらい良く思っていなくて、むしろ嫌っていたに近かった。思い当たる節が見当たらない。