男子と会話はできません
◇
『市ノ瀬くん』
先生の声で目を覚ます。
顔を上げると、腕を組み呆れた顔の先生がいた。
一年の音楽の授業、オペラをみせられ、気づいたら爆睡していた。
『こんなに毎回毎回、寝るなんて、君くらいよ』
『先生、ごめん。あと三分だけ』
『ダーメ。とりあえず教科書くらい出しなさい』
眠い。わかってくれよ、この眠さ。
仕方なく机の中に入れていた教科書を取り出した。
つうか教科書今使ってないんだから出す必要なくねーか?
心の中で毒づきながら、教科書がなぜか二つあることに気がついた。
あれ。俺、誰の持ってるんだ?
一つ裏返すと、俺の名前。
もうひとつ裏返すと、
高塚羽麗
と、書いてあった。