男子と会話はできません



『市ノ瀬くん』


先生の声で目を覚ます。


顔を上げると、腕を組み呆れた顔の先生がいた。


一年の音楽の授業、オペラをみせられ、気づいたら爆睡していた。


『こんなに毎回毎回、寝るなんて、君くらいよ』


『先生、ごめん。あと三分だけ』


『ダーメ。とりあえず教科書くらい出しなさい』


眠い。わかってくれよ、この眠さ。


仕方なく机の中に入れていた教科書を取り出した。


つうか教科書今使ってないんだから出す必要なくねーか?


心の中で毒づきながら、教科書がなぜか二つあることに気がついた。


あれ。俺、誰の持ってるんだ?


一つ裏返すと、俺の名前。


もうひとつ裏返すと、


高塚羽麗


と、書いてあった。
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