男子と会話はできません
26(side.I)
部活が終わり、部室で着替えていると、「隼人、文化祭で告られたらしいな」と、友達に言われた。
「へえ。誰に?」
「陸上部のマネージャーだって」
あの子かと、思った。やっぱり好きだったんだなと、俺の勘は当たった。
「で、付き合ったのかよ?」
「ん?知らねー」と、にんまりした顔。
「あんだよ。ただの噂話かよ」
「でも告ってるの見たって奴から聞いたしな。告られたのは本当だぞ」と、中身のない内容のくせに得意気だ。
駐輪場へ向かいながら、ぼんやり考えた。
付き合ってくれたら、いーのにな。
楽になれるのにな。
なんとなく羽麗ちゃんの声が聞きたくなって電話をした。
だけど留守番電話に繋がるだけだった。
「あれ」
今日は、まっすぐ家に帰るようなこと言ってたのにな。ぼんやりと文化祭の日のことを思い出した。