男子と会話はできません
◇
文化祭の日。迷路にひとり並んでいたときだった。受付の石川と目が合って、『あれ?羽麗は?』と声をかけられた。
『トイレだって』
『っそ』とあとは興味なさそうに頬杖をつく。話し相手もいなく暇そうに見えて、なんて俺のいいわけであって、少し弱気だった気持ちを確かめたかったのかもしれない。さっき隼人と一緒にいたことも、実は気になっていた。
『あのさ』
『ん?』
『羽麗ちゃんって、隼人と付き合ってたんだよな』
『らしいけど。なに?』
『ずっと引きずってたりしてた?』
真面目に訊いた。それなのに、石川はきょとんとした顔をしてから、口元を緩めた。
『……人生相談?あんたのクラスでやってたんじゃなかったっけ?』
こいつ。からかいの質が悪い。羽麗ちゃん、どうしてこいつと友達なんだ。
『あ、違うか。恋愛相談?』
『ちげーよ!でっかい独り言だ』
『ごめん、ごめん。怒んないでよ。市ノ瀬でもそういうこと、気にすんだね』
『は?』
『なんか誰とでも付き合うからさ。思い込み激しい奴かと思ってた』
……こいつ。失礼にも程がある。