男子と会話はできません

落ち着かない気持ちのまま、帰りのホームルームを迎えた。


隼人くんは終わるとすぐに席を立ってしまって、声をかけれなかった。


「ごめんね。お待たせ」と、廊下で市ノ瀬くんは待っていて、「ん。そんなに待ってないから大丈夫だよ」と、歩き出す。


少し待った。市ノ瀬くんから、喧嘩のこと話してくれるんじゃないかなって。


だけど、近くのスーパーに着いても、話す様子はなかった。


飲料水売り場で、ジュースを選ぶ。


「羽麗ちゃんの飲みたいもの、当てようかな」


「今日は当たるかな?」


「よし、これ」と、手に取ったのは、カルピス。


「すごい。当たったね」と、初めて当たったものだから、驚いた。嬉しくて笑顔になるけど、心なしか、市ノ瀬くんは元気がないような感じがする。


「い……市ノ瀬くん」


「ん?」


「さっき、クラスの子から聞いたんだけど、喧嘩したの?隼人くんと」


「喧嘩?あー、喧嘩なのかな、あれ」と、ぼんやりした口調で言う。


「何かあったの?」


「んー」と、歯切れが悪くて、「気になる?」と訊かれ頷いた。


「言ってほしいことって、やっぱり誰でもあるよね」


そう言うと、レジに向かった。
< 376 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop