男子と会話はできません
落ち着かない気持ちのまま、帰りのホームルームを迎えた。
隼人くんは終わるとすぐに席を立ってしまって、声をかけれなかった。
「ごめんね。お待たせ」と、廊下で市ノ瀬くんは待っていて、「ん。そんなに待ってないから大丈夫だよ」と、歩き出す。
少し待った。市ノ瀬くんから、喧嘩のこと話してくれるんじゃないかなって。
だけど、近くのスーパーに着いても、話す様子はなかった。
飲料水売り場で、ジュースを選ぶ。
「羽麗ちゃんの飲みたいもの、当てようかな」
「今日は当たるかな?」
「よし、これ」と、手に取ったのは、カルピス。
「すごい。当たったね」と、初めて当たったものだから、驚いた。嬉しくて笑顔になるけど、心なしか、市ノ瀬くんは元気がないような感じがする。
「い……市ノ瀬くん」
「ん?」
「さっき、クラスの子から聞いたんだけど、喧嘩したの?隼人くんと」
「喧嘩?あー、喧嘩なのかな、あれ」と、ぼんやりした口調で言う。
「何かあったの?」
「んー」と、歯切れが悪くて、「気になる?」と訊かれ頷いた。
「言ってほしいことって、やっぱり誰でもあるよね」
そう言うと、レジに向かった。