男子と会話はできません
ベンチに並んで座った。少年漫画雑誌もいつも通り買って、鞄の隣に置いてある。
それなのに、落ち着かない。市ノ瀬くんが、さっきから黙っているせいかもしれない。
ちゃんと話そうと決意したはずなのに、いざ話そうと思うと緊張して喉が渇く。スポーツドリンクとかにすれば良かった。喉に張り付く感じが、余計言葉を発しにくくさせる。
「あ……あのね。今日、その、話したいことがあって」
緊張しながら言うと、市ノ瀬くんは、「隼人の家に行ったこと?」と静かに訊いた。
「え?」
「それとも、隼人に告られたこと?」
不意打ちで言葉が出なかった。
「本当なんだ」
頷いた。
あ、もしかして、隼人くんが言ったのかなと、そこで気づいた。
「昨日、電話で言ってくれたら良かったのに」
「ごめんね。昨日、色々あって、なんか混乱しちゃってて、今日話そうと思ってたの」
「隼人に会ってたことくらい、言ってほしかった。そしたら、俺、少しは羽麗ちゃんのこと信じられたのに」
その言葉が胸に刺さった。
もう信じてないと言われたみたいで。