男子と会話はできません
じゃあねーと別れの言葉が飛び交う教室の中、鞄を手にした隼人くんと目があうと、「高塚」と、呼ばれた。
「ちょっと話いい?」と、改まった口調で言う。言われることが想像ついて返事ができない。だけど、隼人くんともちゃんと話さないといけないから、頷いた。
周りが気になったんだと思う。場所変えようかって、二階の空き教室に行った。並べられた机の前。窓を背に隼人くんと向き合った。
「別れたって聞いたんだけどさ」
「市ノ瀬くんから?」
「うん」
「そっか」
思った通りだと、強ばった体が緩んだ。
「高塚に謝ろうと、思ってたんだけど。俺、市ノ瀬に告白したこととか勝手に言っちゃったからさ」
「それは、関係ないから気にしないで」
「俺、なんて言っていいかわかんないけど、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」
伝えなきゃいけないことはあるのに、深く聞かれるのが嫌で会話を立ちきるように足を進めようとした。その場から離れたくなった。
だけど、柱に手をつかれると、隼人くんの腕の中に閉じ込められてしまった。
「別れたなら、今度は遠慮しないでいくよ」
そう言われて、身動きができなかった。
呼吸が伝わってしまいそうな距離に、視線をそらし息を止めた。