男子と会話はできません
「夏祭り、行かない?」
「夏祭り?」
「うん。友達だから、行かない?」
何と言っていいかわからなくて逡巡する。
「本当は夏休みも、会いたいだけだけど」
「……」
「少し考えてみて」と、優しく言うと、隼人くんは先に教室を出て行った。
友達として隼人くんと夏休み会う。それはいいのかな。はっきり付き合わないと決めたはずなのに、そんなことしていいのかな。
頭の中がぐじゃぐじゃだ。
窓から見えたのは駐輪場で、市ノ瀬くんが自転車を押して、その隣を若槻さんが歩いていた。その横顔が嬉しいといってるみたいだった。
わたしと別れたから、市ノ瀬くんには、また新しい出会いや恋が当たり前のように訪れるんだ。それが市ノ瀬くんにとって、最高に幸せな出来事になったりするんだろうな。
わたしとのことは全てが思い出に変わって。
そう気付くと、中途半端な気持ちで付き合うくらいなら、別れた方が良かったんだよねって、思える。
だけど、やっぱり、まだすっきりしないんだ。杏奈が言うように白とも黒ともいえない感情の中にいて、ただ自分が嫌になるだけだ。
やっぱり、わたしは、ひとりでいればいいんだ。隼人くんも市ノ瀬くんも選ばない。ひとりでいいんだ。これ以上、自分のこと嫌いになりたくない。選べないなら、選ばなければいい。