男子と会話はできません
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夏休みになった。実咲ちゃんと遊ぶ約束をしていた日。隼人くんからの着信があったけど、出ることはしなかった。
待ち合わせしたのは、駅前で、ウィンドーショッピングをした後、近くのミスドに立ち寄った。エンゼルフレンチをトレイに乗せる。アイスカフェオレを頼みお会計を済ませ向かうと、先に席を取ってくれていた実咲ちゃんがストローに口をつけながら手をあげた。
「ここだよ」
椅子をひいて座る。少し黒くなった実咲ちゃんは、より快活そうに見えると改めて思った。
「日焼けしたね。実咲ちゃん」
「やっぱり?部活で焼けるんだよね。日焼け止め塗ったんだけどね。羽麗は焼けないね」
「うん。全然、外出てないから」と、エンゼルフレンチに手を伸ばした。
会ってから、実咲ちゃんは、わたしに隼人くんとのことは何も言ってこない。あの話は嘘だと知っていたから、わたしからも最近どうなの?なんてことは訊けなかった。
あんなに恋の話をしていたのに、不自然な気もしてならないのだけど。
「羽麗」
「ん?」
「あのさ、隼人くんと付き合ってたって本当?」
そう訊かれて、どきりとした。