男子と会話はできません

「本当にそうだと思う。自分の気持ちわかんないなんて、バカだよね」


「自分の気持ちがわからない?」


「うん。だから実咲ちゃんは、いつも自分の気持ちに正直で羨ましい。どうやったら、実咲ちゃんみたいになれるかな?しっかりしてて、なんでも出来て、気持ちに正直で、羨ましい」


「わたしみたいになりたいの?じゃあ、わたしと人生取り換える?」


真顔で言った。頷けなかった。自分が嫌いと思っているのに、実咲ちゃんみたいになりたいと憧れているのに。


実咲ちゃんみたいなわたしをイメージすると、サイズの違うぶかぶかの服を着てるみたいに、似合わない気がしたからかもしれない。


「頷けないなら、大丈夫だよ。自分が思うより、自分のこと好きなんだから。そのままでいいんだよ。だって、隼人くん、わたしよりしっかりしてなくて、何もできなくて自分の気持ちがわかんない羽麗が好きなんでしょ?羨ましいのは、あたしだよ」と、視線を落とし、グラスを手のひらで包むように握った。何も言い返せなかった。
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