男子と会話はできません
「……だって、お前、俺と似てんだもん」
そっと若槻の顔が近づいて、唇が重なった。花火の匂いがする。笑い声がする。若槻の温もりがする。
「……表情、変わらないんですね」と、声が震えた。ここは合宿所の庭で、少し離れたところに人がいて、うるさくて、二人きりともいえない場所で、若槻は泣いた。
「わかった。ごめん。考える。考えるから、泣くなよ」
若槻の頭をぽんっと撫でた。なんの気休めだろうと思う。
ちょっと人に優しい振りをすると、安心してることに気付く。
まだ俺って、元気なんだな。大丈夫なんだなって、自分を奮い立たせる理由づくりでもしてるみたいだな。
若槻の為じゃない、自分の為にしたのに、若槻は涙をぬぐってから俺に笑いかけた。瞳がまだ濡れていて、この夜はどんな風に見えているんだろう。
花火の終わりみたいに寂しい気がしたんだ。なんとなくだけど。
俺も寂しいからかもしれない。
「祭り行くか」と、気がつけば呟いていた。