男子と会話はできません
中三のあの日と違うのは、浴衣の色が変わったことだけじゃない。わたし達は高二だし、二人きりで行くし、友達だけど、隼人くんの気持ちを知っている。
だから、待ち合わせの橋に向かう間、ずっとどきどきしてたんだ。
先にいたのは、隼人くんで、わたしを見ると微笑んだ。
「可愛い」
開口一番にそんな科白を言われ、緊張に拍車をかける。思えば告白を受けてからの隼人くんの態度がちょっとおかしい。少し積極的というか、ストレートというか、思ったことを口にしてくれてるということなのかな。
そんなこと思われてるのが不思議で、嬉しいけど恥ずかしかった。
「い……行こっか」と、返事に困って先に歩く。
わたし達以外にも、浴衣を着た人や家族連れが同じ方向へと向かっていくのが先に見えて、祭り会場に近づくにつれ、増えていくようだった。