男子と会話はできません
巾着が震えた。着信かな。スマホを取り出すと、杏奈からメッセージがきてた。
『余計なことかもしれないけど、地元のお祭り行ったら市ノ瀬いたよ。バスケのマネと来てた』
えっ……。心臓がドクンと反応した。
「何かあった?」
「ううん。なんでもない」
顔を上げた瞬間、大きな花火が夜空に打ちあがった。子供の歓声が聞こえた。
一緒だよ。わたしだって、付き合ってないけど、隼人くんとここにいるんだから。
だから、付き合ってなくても行くことだってあるし。
またスマホが震えた。
『手、繋いでたよ。あいつはやっぱりただの女好きか。ちょっとがっかりしたわ』
手……。
わたしと付き合ってたとき、簡単に繋がなかった。じゃあ、それは、やっぱり……。
目の前を同年代くらいのカップルが通る。繋いだ手にきれいな横顔の女の子。一瞬、若槻さんに見えて隣の男の子の顔を確認した。