男子と会話はできません
こんなに時間がかかるとは思わなかった。本数の少ない電車を待って、乗り換えを二回してだいぶ時間をロスしてしまった。
「遅くなっちゃった」
只でさえ出発の時間も遅かったのだから、もう試合は始まっているだろうな。終わってないといいけど。正面から入るとジャージを着た男子が目に入り、どきりとした。違う学校の人だった。
試合が終わった人達なのだろうか、どこかリラックスして見えた。
階段を上り、重い扉を押すと観覧席があった。二面に別れたコートを見下ろす。奥のコートに見覚えのあるユニフォームが見えた。やっぱりもう始まっていた。
バスケットシューズが、床を擦る音が響く。
早足で奥の観覧席へ向かった。知っている人は見当たらなくてほっとする。腰を落ち着けると、すぐに市ノ瀬くんの姿が見つけられた。
今、どうなっているんだろう。瞬時に判断できなくて、相手が得点を決める。その瞬間、負けているんだと理解した。73-82と得点が動いたからだ。
どうやらもう第四クオーターらしい。
視線をまたコートに戻すと、ふわりと相手をかわした市ノ瀬くんがシュートを決めた。
「わっ」
頑張れ、頑張れと、精一杯念を送った。