男子と会話はできません
オフェンスは向こうに変わった。
けれど市ノ瀬くんが、相手を崩しボールを奪う。前方にいた味方にパスをすると、彼はシュートを決めた。ファールを取り、フリースローも丁寧に決める。
点数が一気に狭まる。よしっ!と心の中でガッツポーズをする。
だけど喜んだのは束の間だった。向こうにも勢いは残っていて、鮮やかなシュートを決められてしまう。
なかなか追い付けない試合展開にハラハラする。
そこで、タイムアウトになった。
その間も、顧問の先生が部員に激を飛ばしているのがわかる。大きな身ぶり手振りで何かを説明してるみたいだった。
あの先生、本当に恐いみたい。わたしだったら部活続かないだろうなと自分に置き換えてしまう。
市ノ瀬くんは、何を考えてるんだろう。ただ真っ直ぐ前を見つめている横顔が、きれいだった。
勝ちたくて頑張ってるんだ。バスケ、本当に好きなんだろうなと、今まで話してくれたことや、コートを走り回る姿を見て余計に実感する。胸がキュッと縮むような感覚になった。
「勝てるよ」と、祈るように呟いた。