男子と会話はできません

side.H

下駄箱で上靴に履き替えているときだった。


「おい」


振り向いた瞬間、かなりの接近戦となる。下駄箱に手をつき、俺を逃がさないように封じ込める市ノ瀬がいたからだ。


たぶん、あれだ。


敢えて市ノ瀬をシカトしていたから、ちゃんと話をしようと強行突破に出たんだろう。


「隼人」


「なに」


「シカトすんなよ、ハゲ」


「まだハゲ散らかしてないよ」


「ハゲ散らかり具合はどうでもいんだよっ。つうかさ、おまえがそんなに俺を気に入らないんなら……勝負しねーか」


「勝負?何の?」


「マラソンに決まってるだろうが!」


「別にいいけど」


「お前、俺が遅いと思ってんだろう?悪いけどバスケ部なめんなよ。持久力有り余ってんだよ!」


自分から勝負を挑んできたのに、承諾して怒られても困るけど、素直になれないだけなんだろうなと、市ノ瀬の気持ちは何故か手に取るようにわかってしまう。
< 455 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop