男子と会話はできません
「隼人くん、おはよう」
「高塚、おはよ」
後ろから来た彼女に声をかけられ立ち止まる。友達に気づいて「杏奈、おはよう」と足早に横を過ぎていった。
開けっぱなしの窓から、風が通り過ぎた。
夏の匂いを残したまま、秋になった。
だけど、それも今だけ。
だから、この傷みもきっと今だけ。
なら、もう少し市ノ瀬に意地悪してもいいかな。くだらないことを考えて一人で笑いたくなった。
身体が軽い今日は、気持ち良く走れそうだと腕を伸ばす。
そういえば、どうして走り始めたんだっけ。
色んなことを思い返す。だけど、そのきっかけが今となっては思いだせなかった。
ただゴールの先に何があるかわからないけど、走らないと知らない世界を見続けるのは、悪くはない。
だから、今日も走っていく。
その先に彼女がいても、いなくても。
ただ走っていくんだ。
be happy and smile