男子と会話はできません

「えっ?気になる?」


「だって本当は目があって話しかけてほしかったんじゃないの?あんなにあからさまに意識できるくらいさ。どうせそうやって意識するくらいだったら、自分でちょっと行動してみたら?」


「ち……違うよ。そういう意識じゃないよ」


「怖い怖いとか頭ごなしに決めつけたら、なんにもはじまんないよ」


杏奈はさとすように言う。心配されてるのは、わかるけど、腑に落ちない。


だって、男友達なんて胸を張って言える人なんていなかったから、緊張して話しかけられたらどうしようかって、意識してしまっただけなのだから。








体育館に入り、杏奈と前後に並んで座って待機する。


端のほうでは、運動部で試合に出る予定の選手だけがユニフォームを着て部活ごとに分けられていた。


ふと見ると、バスケ部の白地に水色の文字が入ったユニフォームが目に留まった。


市ノ瀬くん。


隣にいる同級生っぽい男の子と話して笑っている。


どこにいても楽しそうな人なんだなぁ。
< 57 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop