男子と会話はできません
「えっ?気になる?」
「だって本当は目があって話しかけてほしかったんじゃないの?あんなにあからさまに意識できるくらいさ。どうせそうやって意識するくらいだったら、自分でちょっと行動してみたら?」
「ち……違うよ。そういう意識じゃないよ」
「怖い怖いとか頭ごなしに決めつけたら、なんにもはじまんないよ」
杏奈はさとすように言う。心配されてるのは、わかるけど、腑に落ちない。
だって、男友達なんて胸を張って言える人なんていなかったから、緊張して話しかけられたらどうしようかって、意識してしまっただけなのだから。
体育館に入り、杏奈と前後に並んで座って待機する。
端のほうでは、運動部で試合に出る予定の選手だけがユニフォームを着て部活ごとに分けられていた。
ふと見ると、バスケ部の白地に水色の文字が入ったユニフォームが目に留まった。
市ノ瀬くん。
隣にいる同級生っぽい男の子と話して笑っている。
どこにいても楽しそうな人なんだなぁ。