男子と会話はできません
「バスケ、最後まで見てくの?」
「あ……うん。市ノ瀬くんに応援に来てって言われたから」
「そっか」
「みんな凄いねー」と、わくわくした気持ちがまだ胸の中に残っていて噛みしめたくなる。
「好きになった?」
「えっ?」
「バスケ。楽しそうに応援してたから」
びっくりした。隼人くんから好きと言う言葉を聞くだけで、敏感に反応してしまうなんて、痛いなわたし。
「あっ、うん。楽しかった。隼人くんが色々教えてくれたから、余計に。細かいルールも少しわかったし。あっ……そうだ。彩子も時間あったら応援来てって言ってたんだ」と、隼人くんに言うのを忘れていたことを思い出した。
一度表情が固まった気がしたけど、「間に合うといいね」と呟いた。
隼人くんは変わった。
小さい頃は、子供のくせに心にスーツでも着たような、大人ぶった雰囲気のある男の子だったのに、それが自然と落ち着いてみえるようになった。
だけど変わらない芯の強さや他意のない優しさを感じられる。
変わってないところだって、あることくらい知っているんだ。
苦しくなる。
でも、友達。
やっと友達になれたんだから。