男子と会話はできません
次は西高前と、お決まりのアナウンスが鳴った。
隼人くんは、先に行ってしまう。
だけどバスのステップを降りると、イヤホンを耳から外してMP3プレイヤーをポケットに仕舞う隼人くんの後ろ姿があった。
あ……。
振り返ると、目があう。
思わず、「おはよ」と言ってしまう。
「さっき言った」
「そうだった」
そう言うとゆっくりとした歩幅で進んでいく。
「珍しいね。この時間に高塚乗るの」
避けてたからとは言えない。
「うん。今日早起きしたから」
「珍しい」
「隼人くんに会いたくて」
言ってからはっとする。こんな科白、好意を持ってますと言ってるみたい。
せっかく友達になれたのに、誤解させるようなこと言ったら、嫌われてしまう。
「渡したいもの、あったから」と、慌てて付け加えて、鞄の中に入れた紙袋を取り出した。
「はい」と差し出す。