四季の恋 ~春の始まり~
「にしてもさー
紅葉さんとか呼びにくくない?」
「えっ」
「ずっと思ってたんだー
私、桜坂さんになんて呼ばれてるのかなって
今まで話したことなかったから確かめようがなかったんだけど
今日やっと離せたと思ったら
案の定『紅葉さん』でしょー?
なんか、堅苦しくて呼びにくくない?」
それって……それって……
「だからさー
私のことはアキでいいよ
アキちゃんとかじゃなくて“アキ”ね!」
憧れの名前呼び!
ずっと憧れてた
友達いなかったから
名前呼びあんまできなくて
「え……っと
ア、アキ……?」
照れるのを必死に隠して
呼んでみた
「そうそう!
わぁー桜坂さんにそう呼んでもらえる日が来るなんて!
新鮮!」
ぱあっと嬉しそうな顔をして紅葉さん……じゃなかったアキはそう言った
表情に出てるのアキもじゃない
って思ったら一気に笑いがこみ上げてきた
「あははっ
面白い!」
突然笑い出した私にアキはビックリしてたけど、一緒に笑ってた
「あっ私もそうだ!
桜坂さんって言いにくいでしょ?
ハルとか、ハルカでいーよー」
「うん!
じゃーハル!
これからもよろしくね!」
とっても嬉しそうな顔でそんなこと言われたら
私も嬉しくなる
友達が増えるっていいな
幸せだな
高校入って初めての友達!
ナツキはずっと一緒だったから初めてとは言わないよね
高校入って初めての友達がアキでよかった
こんなにいい子他にいないよ
私は心の中で何度も思った
“アキありがとう”