初恋は最後の恋
私のクラスに転向してきた御堂雪乃さんは、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗という、まさに神様から全ての才を授かったような人だった。当然、男子からは注目の的。すでに生徒会からもお声がかかっているらしい。
そんな御堂さんが、なぜ普通すぎるこの学校に転校してきたのか。私はそれだけが疑問だった。何か特別な事情があるのかもしれないが、私がそれを彼女に聞く事はなかった。
もう一人の転校生の結城真樹は、すでに学校から問題児扱いをされているらしい。授業には出席せずに、学校にいる時間の大半を屋上で過ごしている。一度休み時間に様子を見に行ったところ、陽の光を浴びながら昼寝をしている彼を見つけた。声はかけなかったが、休み時間の間に彼が起きる事はなかった。
そして一部の上級生から目を付けられているようだが、彼は決して手を出さない。相手の気が済むまで殴らせてから、何も言わずにその場を立ち去るらしい。結果、彼は毎日傷だらけだった。
私は考えた。彼が不良のような格好をしているのも、喧嘩で絶対に手を出さない事も、周りを自分に寄せ付けないためではないだろうか。こうして再会するまでの間に、彼に何があったかは分からない。聞いても無視されるだけだろうし、答えてはくれないと思う。
それでも、
「おはよう、結城くん」
私は彼が気になった。放っておけなかった。一人で苦しんでいるかもしれない初恋の人を、私は見て見ぬふりなど出来ない。
だから登校時、休み時間、昼休み、下校時間、私は彼を見つける度に声をかけた。ほとんど無視されてしまうけれど、もう慣れてしまった。
そんな日が何日続いただろうか。学校へ登校する途中、私はとある公園で彼を見つけた。しゃがんで、何か話している。いつもなら「おはよう」と声をかけるのだが、私は何も言わずに彼を見ていた。
彼の足元には、まだ産まれたばかりであろう子猫がいた。段ボール箱に入れられているという事は、捨てられてしまったのだろうか。彼は辺りを気にしながら、その子猫を優しく撫でていた。ポケットからコンビニで買ったと思われる猫缶を取り出すと、それを子猫に与えた。
「俺が面倒を見てあげられれば一番いいんだが、今は自分の事で精一杯なんだ。また帰りも餌持ってきてやるから、その間に優しい人に拾われるといいな」
彼はそう言うと立ち上がり、その場を去っていった。隠れてその様子を見ていた私は、あの時と何も変わらない彼の優しさを垣間見た気がして、胸が熱くなった。そして決めた。
「君は、私が飼う!」
私は子猫に指を指しながら叫んだ。その声が届いたのか、餌を食べる口を止め、子猫は私をジッと見上げるのだった。
そんな御堂さんが、なぜ普通すぎるこの学校に転校してきたのか。私はそれだけが疑問だった。何か特別な事情があるのかもしれないが、私がそれを彼女に聞く事はなかった。
もう一人の転校生の結城真樹は、すでに学校から問題児扱いをされているらしい。授業には出席せずに、学校にいる時間の大半を屋上で過ごしている。一度休み時間に様子を見に行ったところ、陽の光を浴びながら昼寝をしている彼を見つけた。声はかけなかったが、休み時間の間に彼が起きる事はなかった。
そして一部の上級生から目を付けられているようだが、彼は決して手を出さない。相手の気が済むまで殴らせてから、何も言わずにその場を立ち去るらしい。結果、彼は毎日傷だらけだった。
私は考えた。彼が不良のような格好をしているのも、喧嘩で絶対に手を出さない事も、周りを自分に寄せ付けないためではないだろうか。こうして再会するまでの間に、彼に何があったかは分からない。聞いても無視されるだけだろうし、答えてはくれないと思う。
それでも、
「おはよう、結城くん」
私は彼が気になった。放っておけなかった。一人で苦しんでいるかもしれない初恋の人を、私は見て見ぬふりなど出来ない。
だから登校時、休み時間、昼休み、下校時間、私は彼を見つける度に声をかけた。ほとんど無視されてしまうけれど、もう慣れてしまった。
そんな日が何日続いただろうか。学校へ登校する途中、私はとある公園で彼を見つけた。しゃがんで、何か話している。いつもなら「おはよう」と声をかけるのだが、私は何も言わずに彼を見ていた。
彼の足元には、まだ産まれたばかりであろう子猫がいた。段ボール箱に入れられているという事は、捨てられてしまったのだろうか。彼は辺りを気にしながら、その子猫を優しく撫でていた。ポケットからコンビニで買ったと思われる猫缶を取り出すと、それを子猫に与えた。
「俺が面倒を見てあげられれば一番いいんだが、今は自分の事で精一杯なんだ。また帰りも餌持ってきてやるから、その間に優しい人に拾われるといいな」
彼はそう言うと立ち上がり、その場を去っていった。隠れてその様子を見ていた私は、あの時と何も変わらない彼の優しさを垣間見た気がして、胸が熱くなった。そして決めた。
「君は、私が飼う!」
私は子猫に指を指しながら叫んだ。その声が届いたのか、餌を食べる口を止め、子猫は私をジッと見上げるのだった。