鬼系上司は甘えたがり。
0.プロローグ
私が勤める会社には、誰もが恐れる鬼がいる。
仕事は丁寧かつ迅速で、社内外から絶大な信頼を得ていて、黙っていれば華があるその人は、名を新田真紘(にった まひろ)という。
けれどひとたび口を開けば容赦がない。
毒舌、鬼畜、超ドS--私なんて何度、火にくべて燃やすと脅されてきたことか。
仕事以外では絶対に関わりたくない。
そう心に固く誓っていたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「薪、これからも俺から離れられない契約をしようか。ちなみに拒否権はないし、一生だからな。どうだ、嬉しいだろう?」
綺麗な一重瞼の目を細め、薄い唇で不敵に笑うその顔がたまらなく愛しく思えるなんて、末期以外にどんな症状があるというのだろうか。
好きとか愛してるとか、女子なら一度は夢を見る甘い台詞には程遠いことしか言えないこの人に、私は日々、甘く毒されている--。