鬼系上司は甘えたがり。
 
「薪は俺が好きか?」と何度も確かめるように訊かれ、そのたびに私は主任から与えられる愛に意識を朦朧とさせながら「好き」と答えて。

途切れ途切れだろうが、言葉になっていないものであろうが、言うと心底満足そうに微笑む主任の顔を見ていると、私も心から満たされる。


ああ、完全に毒されてるなぁ、私……。

精も根も尽き果て、2人でベッドに沈みながら、まだ僅かに覚醒状態を保っている頭でふとそう思い、一人でくすっと笑ってしまった。

ドSな主任のこと、おそらく照れくさくて直接言葉にして言えないこの人のぶんまで私がたくさん“好き”って言ってあげたいと思うなんて、毒されていると表現する以外に何があるだろう。


同期だった2人のことを今日まで忘れ、あろうことか顔も思い出せないショックから切なく締め付けていた胸の痛みは、今、私の素肌の胸に顔を埋めるようにして眠っている主任のおかげで、もうほとんど残っていない。

主任が私のことを肉食獣よろしく虎視眈々と狙っていた……もとい、好きでいてくれた二年半の想いを、少しずつかもしれないけれど、今日のぶんも含めてしっかり返していこう。
 
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