鬼系上司は甘えたがり。
クリスマス特集を大々的に組んだ『iroha 12月号』の発行も無事に終え、いよいよ今年も残りあと一ヵ月を切ろうかという11月最終週--。
私の愛しのドSツンデレ彼氏は、気の毒なことに既に編集部の誰よりも疲れきっていた。
「新田く~ん、今ちょっといい~?」
「……はい、何でしょう、部長」
「編集部の忘年会の相談なんだけどね、こっちとこっち、どっちのお店がいいと思う~?」
原因はこの人、超愛妻家の相崎部長だ。
まだ12月にも入っていないというのに、年末年始の関係でいつもより5日ほど早く発行になる『iroha 1月号』の誌面サンプルを眺めながら、ああでもない、こうでもないと一人楽しそうに忘年会の計画を立てていて、暇さえあればこうして主任を捕まえ、どうでもいいような相談で彼の鋼の精神をも疲労困憊させている。
デスクワーク中心の今日、自分の仕事に集中するふりをしながら部長と主任の会話に聞き耳を立ててみると、どうやら忘年会会場に使うお店は二択にまで絞り込まれているようで、昨日の十択からはかなり進歩している模様。
「……あの、お言葉ですけど、それくらい部長の好きにしたらいいんじゃないスかね」